ソニー DSC-RX10 レビュー 比較と評価

サイバーショット DSC-RX10

ソニーのサイバーショット DSC-RX10は1インチ型(13.2mm x 8.8mm)のネオ一眼ですが、同じソニー機で2005年に発売されたDSC-R1がありました。DSC-R1は21.5mm×14.4mmのCMOSで、24mmから120mm相当でF2.8からF4.8のレンズでした。RX10はR1よりもセンサーが小さい1インチですが、RX10の発売を見てまず思い出したのがR1でした。2005年というかなり早い時期に先駆的な大型撮像素子のレンズ一体型機を出しているソニーが、RX10で再び意欲的な機種を出してきました。

最近のソニーはレンズスタイルカメラのQX100QX10、ミラーレス一眼でフルサイズのα7Rα7と、先駆的で魅力ある機種を次々に発表しています。元々のデジカメ黎明期の1981年のマビカ・ショック(フロッピーディスクに画像を記録する試作機を発表した時の衝撃)のことを考えても、デジカメ業界で先駆的な発表をしてきたのがソニーです。RX10も、そのソニーらしさが詰め込まれている機種になっています。

DSC-R1では実質の焦点距離は14.3mmから71.5mmでしたが、DSC-RX10は実質の焦点距離が8.8mmから73.3mmです。R1は実質71.5mmのF4.8のレンズでしたが、RX10は実質73.3mmのF2.8のレンズなのでRX10のほうが背景がボケます。RX10でまず驚くのは、1インチ型で24mmから200mm相当のレンズで、全域がF2.8を達成したことです。今までネオ一眼での全域F2.8のレンズはパナソニックの独断場で、FZ200もそうでした。全域F2.8のレンズは1/2.3型以下の小型撮像素子と決まっていました。

RX10は1インチで24mmから200mm相当のF2.8のレンズなのに、本体のみで約755gは軽いです。望遠側が200mmなのは、全画素超解像ズームを使うと補えます。RX10は総画素数が約2090万画素ですが、全画素超解像ズームは20M時にも約16倍の約380mm相当、10M時に約23倍で約550mm相当、5M時に約33倍で約790mm相当になります。約400mmくらいあれば動物園でも十分に撮影できるので、約2000万画素で400mmまで使えます。

全画素超解像ズームは等倍で画像を見ると確かに劣化しますが、1/2.3型などの小型撮像素子機の望遠ズームは光学でも望遠端でぼやけた画像になっています。全画素超解像ズームはコンデジの望遠ズームと同じくらいには使えるので、使ってみてはどうでしょうか。全画素超解像ズームを使うと、さらに被写体に寄って撮影することもできます。DSC-RX10の全画素超解像ズームは動画でも使えますし、動画撮影中に光学ズームも使えます。RX10は、他のネオ一眼機よりはかなり画質がいいです。高感度のノイズ耐性がある裏面照射型の1インチセンサーなので、高感度画質も改善しています。

RX10のソニーの公式サイトにサンプル写真がありますが、それを見ても分かります。公式サイトに女性のポートレート写真があります。この女性モデルの写真はかなり綺麗に撮れていて、等倍で見てもクリアな写真です。その女性モデルの写真なら、APS-Cセンサーの一眼で撮ったと言われても区別が付かないくらいです。レンズ一体型はセンサーと画像エンジンにレンズを最適化できますが、女性モデルの写真は1インチセンサーに最適化した結果の綺麗な写真になっています。他のネオ一眼の機種では、RX10の画質に敵わないと思わせる写真です。

その一方で、公式サンプルの船の写真が気になります。その船の写真はISO125ですが、青空にフィルム時代の粒状性に似たノイズが出ています。APS-Cサイズの一眼のISO100では、青空にこんなノイズは出ません。この青空のノイズを見ると、APS-Cの一眼より画質が劣ります。APS-Cサイズの画質の代わりにはなりませんが、ネオ一眼のレベルは超えている画質です。RX10のノイズが気になると言っても画質が良かったRX100より約1段分のノイズが軽減されているので、APS-Cサイズの一眼と比べたら画質が劣るというレベルです。RX10はポートレート用にもよく撮れるので、その用途で使うにもいいと思います。

APS-Cの一眼よりも画質が劣ってもいいので24mmから200mm相当のF2.8のレンズがいいのなら、RX10しかありません。1インチはコンデジの1/2.3型センサーなどでは被写界深度が深すぎて、APS-Cでは背景がボケすぎるという場合にも選択肢に入ります。APS-Cの一眼よりも優れているのは、RX10は静音撮影ができることです。一眼はどうしてもシャッター音がしますが、レンズシャッターのRX10なら静かに撮影できます。RX10は1/3200秒までのシャッタースピードがありますがF8以上に絞った場合で、開放F値でのシャッタースピードは1/1600秒までしか使えません。これはレンズシャッターに関係していますが、レンズシャッターとフォーカルプレーンシャッターの違いとはに、書いています。

DSC-RX10には3段分のNDフィルターが搭載されていて1/8の光量で撮影できるので、NDフィルターを使えば晴天時にも開放F値で使えます。NDフィルターは、動画撮影でも使えます。RX10はプログラムオートとマニュアル露出と絞り優先ではF2.8からF16までレンズの絞り値が使えますが、シャッタースピード優先とおまかせオートではF2.8からF11になります。コンデジはF8までしかレンズの絞り値がないものばかりなので、F16まで使えるのはRX10が1インチのセンサーを搭載しているからです。

RX10の液晶モニターは4:3の3.0型で約122.9万ドットのエクストラファイン液晶で、白画素を追加しているホワイトマジックの液晶で特に見やすい液晶モニターです。RX10は、α7Rやα7よりも液晶のドット数が多いです。液晶モニターはチルト式なので自分のほうに向けられず、液晶の裏返しにもできません。RX10は0.39型の有機ELのEVFで144万ドットで視野率は100%、倍率は35mm判換算で0.7倍です。このRX10のEVFは、ネオ一眼の中では特に見やすいです。ネオ一眼のファインダーがどうしても見にくかったのが、RX10でかなり改善されました。有機ELは黒の発色がいいEVFです。RX10のEVFは、視度調整の範囲が-4.0から+3.0です(ディオプター 眼鏡利用者の裸眼の視度調整)。

DSC-RX10はレンズの銅鏡でマニュアルフォーカスとズーム操作もできて、レンズリングで絞り値の設定もできます。RX10にはマグネシウム合金塗装で、ほこりや水滴にも配慮した構造になっています。RX10はオートのISO感度はISO125からISO12800ですが、マルチショットノイズリダクションでISO25600まで使えます。マルチショットノイズリダクションは連写して画像を重ねてノイズを減らすソニーの機能ですが、かなりノイズが減るので使ってみることをお薦めします。

拡張ISO感度では、ISO80とISO100があります。RX10の露出補正は±3なので、コンデジの高級コンパクト機並みです(露出のことは、デジカメと銀塩フィルムカメラの露出の違いの記事から書いています)。RX10は速度優先の連続撮影では 最高で約10コマ/秒ですが、これは1コマ目にピントと露出を合わせているので惰性連写のようなものです。RX10で連写ごとの被写体にピントと露出を合わせる本来のAF追従連写では、 最高約2.5コマ/秒になります。バッテリーはNEX-5T用でもあるNP-FW50で、CIPA基準で液晶モニターで約420枚、EVFで約340枚です。

DSC-RX10は、シャッタースピードやISO感度の数値が表示される液晶パネルがボディの右肩にあります。これはエントリー一眼にはないので、RX10はエントリー一眼以上の機能があります。他にRX10は、Wi-FiとNFCとEye-Fi対応、水平と垂直方向の電子水準器、ピント面を色で表示するピーキング機能、SDカードのUHS-I対応、色空間のAdobe RGB、トリルミナスカラー対応に対応しています。RX10にはマイク端子があるので、外部マイクも使えます。RX10M2のレビューに、後継機のことを書いています。ソニーのDSC-RX10のテレマクロに、テレマクロのことを書いています。FZ1000とRX10の違いに、パナソニックのFZ1000との比較を書いています。STYLUS 1とDSC-RX10の違いに、STYLUS 1との違いを書いています。

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