Sony α7S レビュー 比較と評価
α7S ILCE-7S
ソニーのα7S ILCE-7Sは、撮像素子が35mmフルサイズの35.6×23.8mmのExmor CMOSセンサーで、総画素数は約1240万画素、アスペクト比は3対2です。画像処理エンジンは、BIONZ X(ビオンズ エックス)です。α7Rの総画素数は約3680万画素で、α7の総画素数は約2470万画素でした。α7Sはα7より画素数を半分くらいで、α7Rより画素数を1/3くらいに抑えています。35mmセンサーで1200万画素なので、1画素の受光面積に余裕ができて、ダイナミックレンジの拡大、高感度ノイズの低減につながっています。レンズ交換式の新機種で、ここまで思い切って画素数を抑えて画質重視にすることはないです。α7Sの画質への思い切りの良さで、思い出すことがあります。ソニーは2005年に、サイバーショットのDSC-R1を発売しています。R1はレンズ一体型機で、撮像素子はCMOSの21.5mm×14.4mmでした。2005年までに、それほど大きなセンサーを積んだレンズ一体型機を出したのはソニーだけで、ソニーは画質にこだわった機種を思い切って発表することがあります。α7Sの画素数を抑えた方向性は、高画素よりも豊かな受光面積からくる写真の良さに惹かれているハイエンドユーザー層にとって、かなりの魅力的な機種になっています。
α7S ILCE-7SのレンズはソニーのEマウントで、Eマウントボディには手ブレ補正が内臓してないので、交換レンズでの手ブレ補正を使用します。ソニーのレンズ交換式で、ボディ内臓の手ブレ補正機が欲しいのなら、Aマウントのボディを購入するしかないです。アンチダストのゴミ除去機能は内臓しています。AFはコントラスト検出方式のみですが、空間被写体検出AFがあって、コントラストAFの精度の高さに、AF速度も高速化しているファストインテリジェントAFがあります。コントラストAFは精度に優れて、位相差AFは速度に優れます。この2つの長所を合わせようとしているのが像面位相差AFで、撮像素子に位相差AFを組み込んで、それとコントラストAFとのハイブリッドAFがあります。α7Sの方向性は像面位相差ではなく、コントラストAFそのものの速度を高めています。コントラストAFの精度に、速度を高められれば理想のAFになりますが、α7Sはその方向性のAFを採用している機種です。
α7S ILCE-7SのAFの測距点数は25点で、AFの検出の輝度範囲は、ISO100相当でF2.0のレンズを使って、EVマイナス4からプラス20です。AFの輝度範囲がマイナス4だと暗い場面にかなり強く、プラス側にも20なので、α7SはAFの輝度範囲の広さも魅力の機種です。ファインダーは1.3cmで0.5型のEVFの約236万ドット、視野率は100%で、ファインダー倍率は約0.71倍です。ニコンの最上位機のD4Sのファインダー倍率が約0.7倍なので、α7Sのほうが少しだけですが迫力があるファインダーになっています。視度調整機能は-4.0-+3.0mです。視度調整のことは、ディオプター 眼鏡利用者の裸眼の視度調整に書いています。液晶モニターは3.0型の約92万ドットで、上に約90度、下に約45度の可動域です。α7Sは、液晶モニターを上に180度動かす自分撮りができる機種ではありません。タッチパネルには対応していません。
α7S ILCE-7Sは、静止画での全画素超解像ズームで約2倍が使えます。全画素超解像ズームは、通常のデジタルズームよりも画質の劣化を抑えたデジタル処理のズームです。静止画でのスマート ズームは、Sサイズでは約2倍までズームできます。スマートズームは余った画素数を使ってズームするクロップ機能で、Sサイズの約300万画素の時に、50mm相当のレンズであれば100mm相当で使えます。ISO感度は、常用感度域は ISO100からISO102400、拡張ISO感度に、ISO50、ISO64、ISO80、ISO409600があります。動画撮影時にも、ISO409600が使えます。α7とα7Rの常用感度域はISO100からISO25600だったので、α7Sになって常用感度域が4倍にまで拡大しています。α7Sになって画素数を1200万画素まで抑えたので、ISO感度の高感度域が拡大できています。α7Sは高感度だけではなく、ダイナミックレンジも拡大して、低感度での画質も向上しています。α7とα7Rでは、マルチショットノイズリダクションでは、ISO51200まで使えました。マルチショットノイズリダクションは、4枚の連写画像を合成して、ノイズを低減できる機能です。α7Sにもマルチショットノイズリダクションがあって、ソニーでは最大で2段分のノイズ低減機能と言っていますが、実際にかなりノイズを減らせます。
α7S ILCE-7Sでの撮影で、他の機種に比べて最も適している被写体状況は、体育館などの室内でのスポーツ撮影です。体育館での室内競技は、体育館の暗さの光量不足に加えて、そこでのスポーツでの被写体を止めようとすると、早いシャッタースピードが必要です。暗い光量不足下で速く動く被写体を止めるには、α7Sの高感度撮影の強みが特に生かされます。α7Sなら、室内競技でも三脚が不要で撮影することもできます。シャッタースピードの上限は1/8000秒で、フラッシュの同調速度は1/250秒、電子シャッターでのサイレント撮影もできます。連写は最高で約5コマ/秒で、JPEG Lサイズのファインで200枚、RAWで61枚の連続撮影ができます。動画は、AVCHDでフルHDの1920 x 1080の60pで約28Mbpsの撮影と、XAVC Sの3840 x 2160ドットで撮影できます。α7Sは、フルサイズの35mmセンサーで、画素加算でなく、全画素の読み出しによるフルHDと4K動画撮影ができます。動画でのAPS-Cレンズも使えます。動画ファイルにはXAVC S、AVCHD、MP4があって、動画の映像はMPEG-4 AVC/H.264、動画の音声はXAVC SはリニアPCMのステレオ、AVCHDはドルビーデジタル (AC-3)のステレオ、MP4はMPEG-4 AAC-LCのステレオです。
α7S ILCE-7Sはハイフレームレート(120fps)のスローモーション動画、MP4でも記録できる同時ビデオ機能もあります。露出補正の補正幅は±5.0EVで、ニコンのD4SやキヤノンのEOS-1D Xの最上位機と同じ補正幅です。AFでピント合わせをした後で手動でピントの微調整ができるダイレクトマニュアルフォーカス(DMF)、フレキシブルスポットは小さな被写体にピント合わせができる機能で、S、M、Lの3つのスポット枠の中から選べます。ソニー機にはピクチャーエフェクトがありますが、中でも、ソフトハイキーはふんわり明るく撮れて、特に女性のポートレート向け、リッチトーンモノクロは印象的なモノクロ写真が撮れます。AdobeRGBの色空間も、もちろんあります。ピーキング機能は、ピント面を色で強調してくれる機能です。記録メディアはSDカードで、UHS-Iにも対応、メモリースティック、Eye-Fiにも対応しています。ホワイトバランスの微調整は、グリーン、マゼンタ、アンバー、ブルーを±7段で調整できて、被写体の印象を大きく変えて撮影することができる機能です。ホワイトバランスブラケット機能もあります。
α7S ILCE-7Sは、レンズの絞りで解像度が落ちて、画質が低下するのを改善した回折低減処理の機能もあります。α99にもある直感的な操作のクイックナビプロもあります。ロックオンAFは中央エリア以外でも使えて、カスタムキーにも割り当てができる瞳AFはポートレート撮影に使えます。Wi-Fi機能、近距離無線通信のNFCもあります。マイクロUSB端子、マルチインターフェースシューもあります。バッテリーのNP-FW50で、CIPA基準でファインダー使用時は約320枚、 液晶モニター使用時は約380枚の撮影枚数です。ボディにはマグネシウム合金で、防塵・防滴にも配慮した設計になっています。本体のみで約446グラムです。Eマウントレンズには、FE 35mm F2.8 ZAやFE 24-70mm F4 ZA OSSなどの魅力的なレンズもありますが、別売のマウントアダプターLA-EA4やLA-EA3を使えば、全てのAマウントレンズをα7Sでも使うこともできます。APS-CサイズのEマウントとAマウントレンズも使えて、APS-Cレンズ使用時はクロップ撮影で、画素数は約510万画素になって、EVFは自動でAPS-Cサイズ用の全画面表示のファインダーになります。
α7SのEマウントは、レンズのマウント面から撮像面までの距離のフランジバックが18mmと短いので、マウントアダプターを使ってオールドレンズを使う趣味性も増しています。α7Sは35mmフルサイズなので、オールドレンズの画角がそのまま使えます。ライカのレンズなどもその画角のままで使えます。マニュアルフォーカス時に、フルサイズで約8.3倍まで被写体を拡大して確認することもできます。α7S IIとα7Sの違いに、違いを書いています。α7S IIのレビューに、後継機のことを書いています。α7Sとα7Rの違いとα7Rのレビューと比較、α7Sとα7の違い、α7のレビューと比較、D810とα7Sの違いに、それぞれの機種の記事を書いています。
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