スマホで写真閲覧が写真の質を下げる
スマホの写真閲覧で鮮やか志向の問題
スマホやタブレットで写真閲覧する機会が増えて、だんだんと、絵作りでの注目される度合いが変わってきています。
スマホでの写真閲覧で、スマホユーザーに入り込んでいく写真は、くっきり鮮やかな写真です。こういうスマホやタブレットユーザーが増えていくことで、写真界の絵作りの方向性も変わっていっています。
facebookにも写真を投稿するユーザーの集まりもあって、そこから、写真展も開かれるようになっています。そのfacebookの写真も、鮮やかな写真の方向性です。
しみじみと渋みのある写真に侘びを感じるような、そのような趣のある写真ではなく、鮮やかに光っているような写真に注目が集まるのは、特に、スマホの影響です。
facebookでいいねの数が多くついている写真は、渋みがあって趣のある絵作りの写真ではなく、鮮やかな写真で、その鮮やかな写真で写真展まで行っています。
パソコンとスマホの写真閲覧の大きな違いは、その画面の大きさです。パソコンの場合には、渋みのある写真でも、この写真はすばらしいと思えて鑑賞してきたのは、画面が大きいので写真の趣が認識できたのです。
スマホはモニターが小さいので、どうしても、くっきりした写真が好まれるようになっています。
この写真閲覧の時代変遷の影響は、商業写真界に影響がないはずがありません。実際に、カメラの絵作りで、渋みのある写真から鮮やかな写真への移動が見られます。
利益を上げる商業分野では、人気がある方向に行くのは仕方ないことですが、問題なのは、フラグシップの最上位機にもその傾向が見られることです。
パナソニックのLUMIX DMC-GH4から、LUMIX DC-GH5の絵作りの変更には、それが典型的にあらわれています。GH4の絵作りは、GH5に比べれば地味になっていました。
逆に言えば、GH5はGH4よりも鮮やかな絵作りになっています。これは、もちろん、JPEGでのことなので、RAWで撮るなら関係ないです。メーカー色が出るのは、JPEGです。
デジタル写真時代になって、初期の頃は、ギトギトの塗り絵みたいな写真の絵作りが問題になって、それが改善されて、自然な絵作りに変遷したはずでした。
鮮やかすぎる写真ではなく、もっと趣のある絵作りに価値があるという声も多くて、実際に、カメラの絵作りも渋みのある絵作りも加味していったのです。
その時のデジタル臭い鮮やかすぎる写真を是正しようという声は、その当時の写真閲覧は、パソコンでのモニターの数がかなり多かったからです。だから、当時は渋みのある写真のすばらしさを認識できたのだと思います。
考えてみれば、パソコンのモニターでの閲覧は、フィルム時代以上の写真愛好家の行為です。フィルム時代にも、モニターに該当する15インチ以上もの大きさで常に印刷する写真愛好家はほとんどいませんでした。
パソコンのモニターでは、常に大きく印刷したのと同じ状態で、写真閲覧をしてきたのです。パソコンのモニターが、写真愛好家の写真を見る眼を育てていきました。
それが、スマホになっていきました。スマホの画面は小さすぎるので、物理的に写真のよしあしなどを判断するのが難しいです。だから、よく分かる鮮やかさに惹かれて行くのだと思います。
GH4の2014年から、GH5の2017年の間の変遷は、写真閲覧の志向の移り変わりに重なっています。2013年頃の写真閲覧の志向を反映していたGH4から、スマホのくっきり鮮やかなGH5の時期に移り変わっていった時期です。
パナソニックとしては、その写真閲覧の時代の志向に合わせてGH5の絵作りを変更したわけですが、GH5はパナソニックのマイクロフォーサーズ機の最上位機です。
そのフラグシップでさえも絵作りを変更するのは、パナソニックのマイクロフォーサーズ機が動画志向が強い理由も大きいと思いますが、スマホの普及によって絵作りが変更した流れを見ることができます。
今後の絵作りの方向性は、どうなるのでしょうか。本当の写真愛好家なら、スマホで写真を見るのは完全な補助用にして、パソコンのモニターで見て、写真を見る眼を育てていくことが大切です。
そうしないと、スマホで写真閲覧ばかりして、それが大半になって、それが、商業写真界に影響をどんどん与えると、一体どうなるでしょうか。
カメラの絵作りがデジタル写真で問題だと言われてきた塗り絵みたいになっても、それが問題だという声が少なくなるかもしれません。
絵作りの問題を指摘できる写真の眼を持っている数は、スマホの小さい画面ではなく、パソコンのモニターで写真を見ている写真愛好家の数に比例するからです。
しかし、現在では、静止画の写真だけではなく、動画ですらスマホの小さい画面で見て、それで満足している数が結構います。
それも考えると、スマホ画面の写真閲覧によって写真の質が下がる問題は、今後、現実的な大きな問題として、写真界に降りかかってくるのではないでしょうか。
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