シグマのレンズとカメラ 日本のものづくりの強みと魅力
シグマと日本のものづくり
シグマはレンズメーカーとして特に知られていて、レンズ交換式の機種のユーザーなら、一度はシグマのレンズを使ってみたいと思ったり、購入したい思いがあると思います。しかし、シグマはフィルム時代にカメラも出していました。そして、フィルムからデジカメになって、シグマのカメラは特にハイエンドユーザー向きの姿勢になっています。
フィルム時代を少し振り返ると、AF速度が速くなって各種の交換レンズでAF作動が可能になったミノルタのα-7000(1985年)は、世界で初めて実質・本格的な銀塩AF一眼レフと言っていいものでした。このα-7000で、ミノルタは複数のカメラ賞を受賞しています。フィルム時代のミノルタは、高級コンパクトのTC-1なども含めて、特色あるカメラを出していました。
そのミノルタも含めて、フィルム時代には個性的なカメラーメーカーがありました。その状況の中では、フィルム時代のシグマのカメラは現在のデジカメ時代にはある輝きがありませんでした。シグマがデジカメ時代になって、非常に特色あるカメラを出してきているのはなぜでしょうか。シグマが高付加価値商品を出していることが言われますが、それ以上のものがあります。
シグマというメーカーは、日本のものづくりを象徴しています。シグマは、福島の会津工場で生産している日本製がほとんどです。そして、出しているシグマのカメラは非常に個性的で変わっていて奇妙に惹きつけられる魅力があるという意味も込めて、変態カメラと呼ばれています。スマホでしか写真を撮らないで、専用のデジカメを使っていない人たちも多くいます。
そういう人たちから見れば、シグマのカメラを熱心に使う層は、カメラ愛好家というよりカメラ狂人家と言ったほうが近いです。狂人には常人と違う意味と、風雅人の意味があります。シグマのカメラは狂人が使う狂人カメラとも言えます。こういった尖がった製品を作ってきたのが、日本のものづくりでした。
日本のものづくりは実直であると言われますが、それは安定期と成熟期に入ったメーカーのことです。昔のソニーは、こんなものが売れるのかというものを柔軟な発想で商品化して、実際に市場を拡大させていきました。そして、ソニーは破竹の勢いで世界に羽ばたいていったのです。日本のものづくりは、技術面での実直さもそうですが、発想の柔軟さがあります。
日本の伝統的なカメラメーカーであるニコンはどうでしょうか。ニコンF(1959年)は、一眼レフとしての基本形を完成させたほど技術的に突出した一眼レフでした。これが産まれた背景で写真愛好家の間で有名なのは、ライカのM3の存在です。M3があまりにレンジファインダー機として優れていたので、日本のカメラメーカーがレンジファインダー機を潔く諦めて、一眼レフに注力したのです。
ライカのM3というレンジファインダーの名機中の名機が、皮肉にも、日本のカメラメーカーが破竹の勢いで世界に羽ばたき、日本のメーカーが一眼レフの独擅場になることに大いに貢献したのです。ライカに追いつけ追い越せできた日本のカメラメーカーが、M3の登場で奮起して、一眼レフに大胆に注力してニコンFに始まる日本のカメラメーカーの歴史があります。
今は伝統のカメラメーカーであるニコンも、挑戦者の立場で大胆な発想と技術力で挑んできたのです。挑戦のニコンがあったから、今の日本の世界に冠たるカメラ王国があります。今のカメラメーカーは、キヤノンとニコンとソニーが三大メーカーになっています。しかし、それ以外のカメラメーカーも、シグマよりは認知度あります。
変わった機能がある機種を出すカメラメーカーなら、ペンタックスブランドもそうです。カメラメーカーは、他の業界であれば十分に尖がっているメーカーばかりです。スマホで写真が撮れれば十分という人たちがそれなりにいる中で、レンズ一体型のコンデジどころか、レンズ交換式に熱心なハイエンドユーザー向けの製品開発をするカメラメーカーは、どこも変わっています。
そんなカメラメーカーの中でも、突出して変わったカメラばかり出しているのがシグマです。シグマは、伝統的なカメラメーカーとは重ならないカメラを出して需要を掘り起こしています。そして、シグマのカメラは写真の意義を満たすものです。写真には記録と表現の二つの側面がありますが、シグマのカメラはこの二つを満たしています(動きのある表現は、シグマのカメラは苦手ですが)。
被写体を克明に記録し、印象的に表現すること。端的に言えば、写真とはこれを続けてきたのです。シグマの狂人カメラは、ハイエンドユーザーが写真で求めることに応えてきています。シグマという非常に尖がったカメラメーカーでも企業として存続できる懐の深さが、日本がカメラ王国であることの証でもあります。
こういう非常に尖がったメーカーがカメラ業界では存続できること、そして、それを支える写真愛好家、アマチュア写真家がいることが、シグマがシグマでいられることです。シグマを主として支えてきたのは、こういった職業写真家ではない撮影者たちです。熱心な写真愛好家が一定数いることと、写真にはそれだけの特別な魅力があることの証でもあります。
シグマは大手に比べると小規模のカメラメーカーですが、撮像素子は自社製です。撮像素子が自社製なのは、キヤノンとソニーと富士フィルムとシグマの4社です。Quattroセンサーは何が変わったのか、Foveonセンサーとベイヤー配列フィルターの違いに、シグマのセンサーのことを書いています。シグマは非上場企業なので、ハイエンドユーザーに向けて変わった魅力あるカメラを出せることもあります。
山木和人社長になって、レンズのラインナップをContemporary、Art、Sportと3つに分類しています。とにかく画質を追求したArtラインがあります。シグマは会津工場での生産も含めて、その発想と技術力を見ても、日本のものづくりを具現化したカメラメーカーです。しかし、シグマは大手よりは小規模なので柔軟さもあります。
シグマのカメラが売れて広まってくれるのはそれだけハイエンド市場が広がるので望ましいことですが、今のような狂人カメラと言ってもいいものが出なくなるのではと心配するところもあって、痛し痒しの面もあります。シグマの職人カメラの気質が今後もずっと続いてほしいと思います。
シグマのContemporary,Art,Sportsレンズの違いも、書いています。
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