プロカメラマンが35mmフルサイズを使うという迷信

プロカメラマンと35mmフルサイズ

プロの職業カメラマンなら、35mm判フルサイズのカメラを使っているに違いないという声を聞くことが結構あります。これは迷信で、都市伝説の類ですが、どうして言われているのでしょうか。

これは、写真を職業にするのだから、絶対に高画質でなければならないはずだという思い込みが、まずあります。そうであるなら、最高画質は35mm判ではないので、そこからおかしいわけです。

カメラの歴史を振り返れば、35mm判フィルムのカメラは、小型で扱いやすいから、一般的に使われるようになったのです。ママさんカメラとして使われてきたフィルム時代のキヤノンのKissシリーズも、小型でかわいいデザインを狙っていました。

35mm判コンパクト機も、写ルンですのインスタントカメラも、35mm判という小型フィルムだったから実現できて広まったのでした。35mm判「フルサイズ」は、ハーフサイズと比較してフルサイズと呼ばれていましたが、実態はフルサイズではいのです。

35mm判に比べると、もっと大きな中判と大判があります。大判から見ると、35mm判は小型フィルムで、画質を犠牲にして気軽に持ち歩けるようにしたカメラです。

デジタル時代になって、35mm判が「フルサイズ」と言われるようになったのは、1/2.3型のような豆粒センサーが主流のコンデジが広く行き渡って、1/1.7型という豆粒センサーですら「大きく余裕のあるセンサーサイズ」などと言われてきたからです。

そんな状況の中では、35mm判相当のセンサーは超巨大と言ってよく、まさにそれこそが最上級の意味の「フルサイズ」であるとして呼ばれてきただけで、デジタル写真時代の便宜性の問題です。

フィルムの時にはハーフサイズとの区別で標準の意味でフルサイズと呼ばれ、デジタル時代になってからはAPS-Cと区別するために標準のフルサイズと呼ばれてきた35mm判の実体は、単に区別されるための記号で使われてきただけで、実際の画質を伴ったフルサイズではなかったのです。

このフルサイズの意味には、標準と最上級の意味がありますが、この2つの意味が混ざり合っています。

さらには、デジタル時代になっても、35mm判相当以上のセンサーの機種はすでに出ているので、画質で考えると、35mm判にこだわる理由は、ますますなくなっています。

実際に、プロカメラマンが使っている中で多いのが、マイクロフォーサーズの機種です。

プロカメラマンがマイクロフォーサーズを選ぶ理由

APS-Cの機種を使っているプロカメラマンも非常に多くて、APS-Cのエントリー機であるKissシリーズもプロに使われています。例えば、赤城耕一『銀塩カメラ辞典』(平凡社)には、東松照明も、APS-Cのkissデジタルを使っていたことを書いています。

35mm判以下ではプロだと写真展で展示できないとかは間違いで、写真展にマイクロフォーサーズ機での写真も普通に見られます。

もっと言えば、コンデジを使って作品撮りしているプロもいるので、35mm判相当でないとプロカメラマンではないというのは、現在の写真界の現状から遠くはなれた別世界のおとぎ話のようになっています。

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