まばたきシャッターカメラの激震と犬猫写真家の誕生

犬のプロカメラマンの誕生

以前書いたDSC-QX100の記事にまばたきシャッターカメラのことを書いて、将来、ソニーがまばたきシャッターカメラを実用化して商品として出すことを予想して書きましたが、実際に、ソニーがまたばきシャッターの特許申請をしています。ソニーのまばたきシャッターを紹介したギガジンの記事には、こう書いています。

ソニーが提出したスマートコンタクトレンズの特許申請書によると、コンタクトレンズには極小のカメラユニットだけでなく、ストレージ・イメージセンサー・撮像レンズ・無線通信ユニットなどを搭載しているとのこと。撮影時のシャッターはまばたきを行うことで切ることができ、絞り調整・ズーム・焦点を合わせるなどの操作が可能と説明されています。また、眼球の動きによる画像のブレを防ぐ「目ブレ防止機能」についても言及されています。

まぶたの圧力をセンサーで感知することで、通常のまばたきとシャッターの違いも区別できるとのこと。また、絞り調整やズームなどの機能はまぶたの開き具合によって調整できるとされています。撮影した写真は内蔵ストレージに記録できると見られており、さらに無線通信ユニットから任意のデバイスに写真を送信することも可能と主張しています。まるで映画のような技術の実現が現実味を帯びていますが、「目に見えないカメラ」のプライバシー問題へどのように対処するかが気になるところです。

デジカメ時代では指でシャッターを切る必要はないので、まばたきでシャッターを切るという発想が出ても不思議でもありません。それでは、このまばたきシャッターカメラで写真はどう変わるのかが気になりますが、写真は根底から変わることになります。シャッターは指で切る必要はないと言いましたが、それでは、写真は誰が撮るのでしょうか。

今まで、写真は人間が撮ることが大前提でした。写真撮影をする主体は、絶対に人間だったのです。長時間設定で撮影する場合にも、それは人間が設定していました。しかし、まばたきシャッターができると、動物でも撮れるようになります。ペットの犬や猫でも写真撮影ができるのです。今まで、ペット写真と言えば、人がペットを撮ることが絶対でした。

ペットは必ず、撮られる対象だったのです。それが、犬や猫が写真撮影の主体になるのです。これは、今まで美術史家や写真評論家が写真行為で言ってきたことも根底から覆ります。見ることと見られることの視線の関係性を言ってきた美術史家でも、動物のことまでは一切考えてきませんでした。

今まで、見る/見られることを権力関係と捉えて根底から既成概念を捉えなおすと言ってきた美術史家たちも、動物は絶対に見られる側であると規定してきました。ポストモダンに影響を受けた現代美術に、ポストモダン・フォトグラフィがあります。そのポストモダン・フォトグラフィや、ポストモダンの影響を受けた写真がしてきたことの中に、見ることと見られることの境界線を曖昧にすることがありますが、人間が撮影主体であることには境界線はなく疑ってきませんでした。

それが、まばたきシャッターカメラがあれば、ペットの犬や猫が写真家になるのです。まばたきシャッターカメラは、犬や猫に最適のものも出てくるでしょう。そして、犬や猫の視点で自分で撮影してきた写真ができるのです。今まで、ペット写真と言えば、必ず、撮られて見られる対象のペットの写真のことでした。

しかし、まばたきシャッターカメラで、ペット写真とは、ペット自らが撮ってくる写真の意味を与えられることになります。ペット写真の意味が変わるので、定義も変えないといけません。これほどの撮影主体と撮影対象の逆転は今までの写真史にはないので、美術全体にも激震が走ることになります。

今まで、写真表現や美術表現全般において、それらを根底から表現を疑うと言っては、様々なことを繰り返してきましたが、それらは、全て人間主体で人間前提だったのです。しかし、やがては、犬や猫の写真家が個展を開いて、その犬や猫が写真賞を受賞する未来もあるでしょう。まばたきシャッターカメラが激震をもたらすとは、そういうことです。

犬や猫の職業写真家の誕生です。今まで、大量の写真論が言われてきましたが、著名な写真論の中で犬猫写真家が出てくることにに気付いたものはありません。対抗文化やポストモダンと言って過激なことを言ってきたつもりの美術論の中でも、人間前提が主柱にあったのです。動物写真家と言えば、人間写真家のことですが、まばたきシャッターカメラ以後の世界では、犬猫写真家のことかもしれません。

そして、ペットがペットを撮った写真集なども出てくることになります。犬や猫が職業写真家になることに、人間の写真家はどれだけ許容できるでしょうか。犬が撮影主体となり、人間が撮影対象になることに我慢がならないという感情もあるでしょう。やがて本格化する人工知能写真家と合わせて、職業写真家にとっては職業が奪われることにもなります。

しかし、犬猫写真家の誕生はデジカメ時代の宿命です。フィルムカメラも画家が作る絵に比べれば一瞬で被写体を克明に記録できるところは、デジカメと変わりませんでした。絵画から見ると、フィルムカメラですでに機械の塊で、そして、画家が記録に残すという職をフィルムカメラは奪ってきたのです。

そのフィルムからデジカメになって、さらに機械化が進みました。フィルムカメラの時点で、AF化、AE化はすでに行われています。コンパクトカメラ、さらには、写ルンですは相当に簡単に撮影できます。デジカメ時代になってからモニターですぐに撮影画像が確認できることもそうですが、撮影者によるフィルムの頃は必要だった撮影技術がますます必要なくなったのです。

そうやってますます機械化が進んで、さらに簡単操作のカメラが出てくることは、デジカメ時代の宿命なのです。その時代ごとの先進機械の恩恵を受けてきたのがデジカメなので、その恩恵を止めることはできません。デジカメになってさらに機械任せが増えたことの延長に、まばたきシャッターカメラが出てくるのです。

まばたきシャッターカメラでは、静止画の写真と動画も撮れるようになります。写真と映画の両方に、影響があるのです。中でも、一瞬の動作で被写体を記録できる写真は、犬猫写真家にとっても操作がしやすいものです。宇宙旅行での宇宙撮影も、まばたきシャッターカメラであれば犬猫写真家でも撮影ができます。

犬猫宇宙写真家の誕生です。そういう時代は超現代美術の時代とも言えますが、それが一般的になれば、犬猫写真家がいることが現代美術の世界になります。人間側の変化と言えば、障害者に撮影の機会を大きく提供するのがまばたきシャッターカメラです。人工知能の自動車での移動と合わせて、障害者の写真家が誕生しやすくなります。

写真は健常者が撮るものということへの変化で、人間側の変化は障害者の写真家が誕生しやすくなるのが最大のものになります。まばたきシャッターカメラが出てくることで、健常者の男性と健常者の女性の写真家が大前提できた写真業界に風穴を開けるのは確かなことです。しかし、それ以上に激震と言っていいほどの大変化が、犬のプロカメラマンの誕生なのです。

この激震の大きさは虚構でも何でもなく、技術的に乗り越えれば可能なので、予想以上に早く犬フォトグラファーの誕生が実現すると思います。特に、まばたきシャッターカメラはスナップ撮影に向いています。犬や猫やネズミなどのスナップ写真家が出てくることになります。街のスナップ撮影は人に撮られると拒否される場合にでも、犬のスナップ写真家であれば大丈夫という時代もくるかもしれません。

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