イモトアヤコの写真とカメラ

イモトアヤコと写真

『アサヒカメラ』の2015年1月号に、「イモトの珍景」として、タレントのイモトアヤコさんの9枚の写真が載っていました。そこにスイスの山でイモトアヤコさんが手を広げて立っている写真がありますが、それはスタッフが撮ったようです。植田正治写真美術館で、イモトアヤコ「地球の絶景珍景写真展」と題して2014年10月29日(水)から11月30日(日)に約70点の写真展が開かれたので、そのことで『アサヒカメラ』に載っていました。

イモトアヤコさんは鳥取県の伯耆町出身で、子供の頃に同じ伯耆町にある植田正治写真美術館で写真を見ていました。その美術館で、写真展を開いたのです。植田正治写真美術館は、館内から水面に映る逆さ大山でも知られています。

 今回、地元の植田正治写真美術館で自分の写真を展示できたことを、とても光栄に思います。
 そもそも職業柄、1年の半分以上は海外という生活で、しかもそのほとんどがなかなか観光では行けないような場所。はじめの1年くらいはその貴重さに気付かず、ただがむしゃらでしたが、これは絶対、形に残しておいたほうがよいとカメラを持つようになりました。
 コンパクトデジタルカメラ、ミラーレスを経て、3年くらい前から一眼レフを使用するようになりました。
 私はどちらかというと人を撮影するのが大好きです。なぜかというと撮影をきっかけに現地の方々とコミュニケーションできるからです。
 言葉がわからずとも撮った写真を見せると、とても喜んでくれて、「お茶飲んでくか?」ということにもなります。
 これからも世界各地でコミュニケーションの一つとして、カメラをぶら下げていきたいと思います。

2015年1月号『アサヒカメラ』123頁から引用

この書いていることが、興味深いです。はじめの1年くらいは海外での貴重な場であることの自覚がなかったけれど、自覚が出てきた時に手に取ったのがカメラなのです。絶景や、珍しい光景などに巡り合った時に、それを絶対に記録に残しておきたいならカメラになります。カメラ以前では何だったのでしょう。

カメラのように1秒にも満たない1/8000秒もの瞬間さえ克明に記録できるものがなかった時代には、目の前の光景を残す手段がないので、カメラ以前とカメラ以後では視座が相当に変わっています。カメラ以後では、眼の機能が拡張されて、新しい眼の器官が増えたかのように、そこで見た景色なりをその場で見た眼の記憶を永遠に記録するのです。

登山もして山頂からの景色も見ているイモトアヤコさんがカメラを手に取ったのは、目の前の光景を眼の器官の拡張としてカメラに託したからだと思います。コンデジからミラーレスから一眼レフになるのは、写真愛好家の代表的な道です。一眼レフは、光学ファインダーで絶景を見たまま見ることができるので、ファインダーの魅力があります。

『世界の果てまでイッテQ!』でイモトアヤコさんが一眼レフを使う姿を見れば、一眼レフを使いたいと思う人が出るので、有名タレントが一眼レフを使う姿が広まるのは嬉しいことです。実際に、このイモトアヤコ写真展を見て、一眼レフを買いたい、使ってみたいという声もありました。

そして、カメラを海外での意思疎通に使っています。言葉が分からなくても、写真ではコミュニケーションができるのです。写真が映像を使った共通言語で、一瞬の切り取りの1枚1枚なので、意思疎通しやすいからです。そして、デジカメでは背面モニターを見せて意思疎通できるようになったことがフィルム時代との違いです。

写真という共通言語にデジカメのモニターが加わって、デジカメ時代になって、さらに写真の共通言語の力が増したわけで、それで、海外での意思疎通度が高まっています。これは、海外旅行で現地の人と意思疎通する際にも使えます。海外旅行で意思疎通をしたいれど言葉が分からないのなら、撮った写真をモニターで見せれば、意思疎通の面での和らぎが期待できます。

その写真展が開かれた植田正治ですが、日本を代表する写真家のみならず、植田調、Ueda-Choとして世界的にも有名な写真家です。植田正治は鳥取砂丘の演出写真が有名ですが、写真集の『童暦』も名作です。植田正治の演出写真は、当時の土門拳が提示していたリアリズム写真に批判されて、演出写真を中断していた時期があります。

植田正治は、福山雅治のCDジャケットを撮影したことでも知られています。イモトアヤコはプロの写真家ではないのに写真展が開けるのはおかしいと思っていたら、それがおかしいのです。写真史を見れば、職業写真家ではなく、むしろ、アマチュア写真家がいたからこそ、これだけ写真が普及したことが分かります。

プロであれば制約があるので被写体の撮り方の制限がかかって、写真の記録も表現にも幅が狭まることがあります。植田正治もアマチュア写真クラブの米子写友会に入会して、晩年までアマチュアリズムを大切にしたことでも知られています。写真ほど、プロではない人たちにも懐の深さを見せているものが他にどれだけあるでしょうか。

全くの素人からアマチュア写真家になって、有名写真家になった例はかなり多くあります。アマチュア写真家が写真展を開くのも珍しくありません。『アサヒカメラ』「イモトの珍景」の写真の中で、ケニアでセルフタイマーを使って足元と夕日を撮った写真は、植田正治の光の表現に似たところもあります。使ったカメラはキヤノンのEOS 5D Mark IIと、パナソニックのLUMIX DMC-GF1と書いてあります。

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