日の丸構図は悪くない
中央一点構図
構図の中でも、特に問題があると言われてきたのが日の丸構図(中央一点構図)です。日の丸構図が悪いと言われてきたのは、撮影する時に、日の丸構図ばかりになってしまうからで、日の丸構図自体は悪くありません。言い換えれば、被写体を画面内の真ん中に配置することそのものは、何も悪くないのです。日の丸構図ばかり撮ってしまうのは、ファインダーを覗いたり、モニターを見て撮る時に、主題の被写体ばかりを追ってしまうことに問題があります。
写真を撮り始めたばかりの時に、日の丸構図ばかりになってしまうのは、日の丸構図にしようと意図してのことではないのです。主題の被写体しか頭にないことが多くて、画面内の主題の被写体以外にも注意を向けて構図を考えないから、余計な電線が写ったりするのです(電線が被写体の場合もあります)。日の丸構図になる原因は、他にもあります。AFの測距点は中央で精度が高く信頼性があるので、そこで合わせると日の丸構図になりがちという問題もあります。周辺の測距点で撮影すると、中央ほどの信頼性がないことがあります。
中央の測距点でピント面を合わせた後で、画面内を構成し直すと、ピント面がズレてしまうコサイン誤差が出るので気になってしまうこともあります。そこで、日の丸構図が簡単だからと日の丸構図で撮ってしまうと、意図しない日の丸構図の写真がまた出来上がってしまいます。コサイン誤差が気になるからとか、AFの測距点は周辺で信頼性が落ちるからというのは撮影技術で改善することで、それらを理由として意図しない日の丸構図を撮影する理由にしてしまうと日の丸構図ばかりになってしまいます。
日の丸構図の魅力は、被写体が存在感があって力強く表現できることと、それとは逆のようですが、被写体を画面内の真ん中に小さく配置することの両方があります。被写体に存在感を持たせた日の丸構図は、動物写真の傑作と言われる写真の中にも多くあります。それらの動物写真を撮った写真家は意図して日の丸構図で撮って、その動物の存在感を引き立たせて、被写体の迫力を示して、野生動物の姿を訴えているのです。例えば、『ナショナル ジオグラフィック傑作写真ベスト100』があります。
その写真集は、ナショナル ジオグラフィック誌が創刊されて114年間の中から最高傑作の100点を選んだものです。その表紙のアフガニスタン難民の少女の写真は、114年の歴史の中でも最も有名で感銘を与えた写真となっています。ポートレートは肖像画のことですが、その少女の写真は肖像画の日の丸構図です。世界で大きな衝撃を与えてきた写真誌の写真の中で、日の丸構図の写真が最も感銘を与えた写真であるところに、日の丸構図の力強さが見て取れます。
その写真集の中には、日の丸構図で撮った野生動物の写真が複数あります。植田正治の「妻のいる砂丘風景(I)」は、鳥取砂丘にいる妻が画面内に小さく配置されて、傑作写真ベスト100のように迫力と存在感を求めての中央一点構図ではないですが、日の丸構図で撮った傑作写真で、傑作写真ベスト100に劣るところはありません。そして、その写真たちには、訴える力があるのです。日の丸構図そのものは、何も悪くないのです。
野生動物の生きる姿を日の丸構図で撮ると被写体が迫ってくるような力を持たせることができるし、中央に小さく被写体を配置しても印象的な写真にすることもできます。構図と言えば日の丸構図ばかり撮っているのと、意図して日の丸構図で撮るのとでは大きな違いがあります。日の丸構図で撮る手法の中に、トイカメラでの周辺光量落ちを使うこともあります。
トイカメラモードがあるデジカメでは、意図した周辺光量落ちの写真が撮れます。その周辺光量落ちを利用して、トイカメラモードの色あせた雰囲気も利用して、日の丸構図で撮影するのです。画面構成を単純化した中で日の丸構図で撮影すると、日の丸構図がうまくいくことが多いです。なるべく余計なものを入れないで、被写体を真ん中に配置して撮影します。意図した日の丸構図で、画面内に大きく主題の被写体を配置、その逆で、画面内に小さく配置して訴求力のある写真が撮れるようになると、写真の腕が確実に向上すると思います。
日の丸構図が悪い構図だからと言って、合格の構図としてよく出されるのは三分割構図です。それで、合格の構図だからという理由で三分割構図ばかりで撮ってしまうから金太郎飴みたいな写真ばかりになってしまうのです。構図そのものには、合格の構図や不合格の構図はありません。日の丸構図でも三分割構図でも、重要なのは、その構図の中でどうやって被写体に訴える力を持たせるかで、この構図は不合格だから使えないということはないと思います。
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