ストリートフォトとキャンディドフォトと富士フィルム動画炎上
ストリートフォトとキャンディドフォト
富士フィルムのX100Vの動画が批判されて、動画が削除されました。その動画は、写真家の鈴木達朗氏がX100Vでストリートフォトを撮影している動画でした。動画の長さは6分51秒でした。この件について、擁護側と批判側の意見を紹介して、最後に意見をまとめています。
鈴木達朗氏を擁護する意見としては、ストリートフォトグラファーの歴史があります。現在でも、写真家集団のマグナムに所属しているブルース・ギルデンがストリートフォトを撮影している動画がYouTubeにあります。
WNYC Street Shots: Bruce Gilden
この動画を見ると、ブルース・ギルデンは鈴木達朗氏とは違って、フラッシュも使って撮影しています。ブルース・ギルデンに比べれば、鈴木達朗氏はストリートフォトとしてもっと控えめに撮っています。
しかし、ブルース・ギルデンがストリートフォトで撮っているニューヨークでは公共の場ではプライバシーがないので、写真家の表現の自由のほうが優先されるという州による違いがあります。ブルース・ギルデンに比べて、鈴木達朗氏はいきなりあらわれてから、一眼より小型のX100Vでいきなり撮っています。
こういった撮り方に、キャンディッド・フォトがあります。ドイツの写真家のザロモンが、国際会議で小型カメラのエルマノックスで各国の首脳を隠し撮りして、それが公平率直な写真としてキャンディッド・フォトと言われるようになりました。
ライカの35mmカメラが出てきてから、持ち出してスナップショットに使われるようになって、特に、アンリ・カルチエ・ブレッソンの52年の写真集の『決定的瞬間』はスナップショットの写真としてよく言及されるものです。
それから、カメラがさらに機能が改善されて、明るいレンズも出てくるようになって、カメラがスナップショットにさらに使われるようになりました。特に報道写真にとっては、キャンディッド・フォトは重要です。そういう歴史があるスナップショットは、確かに隠し撮りと批判されても仕方ないことをしてきています。
鈴木達朗氏の富士フィルムの写真はそのスナップショット撮影の舞台裏も公開して批判されました。富士フィルムの動画には、鈴木達朗氏が警察に職務質問されている場面も入っていました。富士フィルムの写真が批判されたのは、写真がフィルムからデジタルになって何が起こったかと、その時代背景を無視したことにあると思います。
今は、テレビの番組でも通行人にモザイクが入っていることがよくあります。昔のテレビ番組では、そんなことはありませんでした。テレビ番組で通行人にモザイクを入れていることが、公共の場所であってもプライバシーがあることを個々人に自覚させたことで、非常に大きいと思います。
さらには、フィルムとデジタルの違いです。フィルムとは違って、今のデジタル写真の解像度では簡単に拡大もできて、個人を特定することがフィルム時代より非常に簡単になっている時代の違いがあります。
それに、デジタルタトゥーがあります。デジタル写真では、フィルム写真とは違って、一旦ネット上に公開されると永遠に消すことができない問題があります。それなら、銀塩カメラで撮影した写真はどうでしょうか。これも、今はフィルム写真をデジタルにすることもできるので、今のフィルム写真であってもデジタル写真の性格の範疇に入れることもできると思います。
今では、デジタルとフィルムの区別なくデジタル化することができるので、デジタルタトゥーの問題は、写真全体の問題になっています。このデジタルタトゥーとデジタル写真の個人特定の容易さの時代背景を無視して、フィルム写真の頃の感覚でいるのが、まず問題です。
デジタル写真は撮られた時から、その写真はデジタルタトゥーの性格を持っていると自覚するのが、写真家に大切だと思います。フィルム時代とデジタル時代では、「スナップ写真とは」と同じく定義することができないのです。
デジタル写真は、フィルム写真と違って、加工も非常に簡単です。写真の合成もできます。結局、0と1の組み合わせにすぎないのがデジタル写真なので、紙に残してきた銀塩時代とは全く違って、別物の写真を扱っているのが現代の写真の本質です。
それに、鈴木達朗氏のような写真家は自分が同じ撮影をされて何も文句は言わないのかの問題もあります。キャンディド・フォトの手法を使っている写真家が、自分が同じことをされて文句を言うのでは話にならないでしょう。
富士フィルムの鈴木達朗氏の動画での鈴木氏の撮影手法は、プロの写真家たちが批判していて、ストリートフォトがしにくくなるという声もあります。ストリートフォト自体は写真文化の中の一つなので、それ自体がなくなるのは写真文化が失われることでもあります。
鈴木達朗氏のストリートフォトの撮影場面は、以下の動画にもあります。
ON THE STREET WITH [002] : Tatsuo Suzuki
このコメント欄には、鈴木達朗氏の擁護の意見が複数あります。「彼のやりかたに人々が何を思うかに関わらず、富士フィルムが彼にしたことはふさわしくなく、ネット上で彼への攻撃もふさわしくない。彼の写真は素晴らしいし、良いやつだ」というようなコメントがあります。
鈴木達朗氏の写真が素晴らしいのはその通りです。撮影した結果に出てきた写真は素晴らしくても、それまでの過程を富士フィルムが動画で公開したことで、舞台裏で隠し撮りでいきなり目の前にカメラを取り出して、通行人を妨害するように撮影し、さらに通行人を追いかけるように撮っている場面もありました。
それに、鈴木達朗氏のストリートフォトで問題なのは、言い返せない女性を狙っているかのような撮り方をしていて、男性を撮影する時には仕事で急いで言い返せないような男性を狙っているという批判もありました。本当にストリートフォトをするなら、ガタイのいい男たちも撮ったらどうだという批判もありました。
本来の隠し撮りのキャンディド・フォトは、国際会議や法廷などの、一般庶民に向けてではなく、一般庶民を管理する側を撮るために注目を集めたものでした。それが、言い返せない一般人を狙った隠し撮りは、単なる嫌がらせではないかという批判もあります。
本来の立場に戻った率直公平な写真で撮る写真であれば、スナップショットでも批判されないと思います。
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