Foveonセンサーとベイヤー配列フィルターの違いと比較
Foveonセンサーとベイヤー配列
シグマのFoveonセンサーの魅力と、一般的なベイヤー配列と呼ばれるカラーフィルターの違いと比較を書いています。Foveonはシグマの子会社で、カリフォルニアのシリコンバレーにある会社です。Foveonの社名は、網膜中心窩(もうまくちゅうしんか)のfovea centralisからきています。ベイヤー配列は、コダックの技術者のBayer氏が考案したものです。Foveonでは色のデジタル補間が必要ないですが、一般的なカラーフィルターはデジタル補間をして写真を仕上げています。Foveonは補間によって存在しない情報を補うことで出る偽色の問題がないので、ローパスフィルターも必要ありません。
シグマは2002年発売のSD9にFoveonを初めて載せて、その時にすでにローパスフィルターがありませんでした。シグマはローパスフィルターレスの優位性にいち早く注目していたのですが、2002年当時はローパスフィルターレスの利点は一般的に理解されていませんでした。それが、今では、ローパスフィルターレスと解像力の性能が当たり前のように言われています。2002年当時のシグマの先見性が正しかったのは、デジカメ史に残ることになりました。
Foveonセンサーと、ベイヤー(CFA:カラーフィルターアレイ)センサーの端的で特徴的な違いは、Foveonセンサーは全てのピクセルで解像度の輝度情報が取れます。ベイヤーセンサーはそれが半分しか取れません。さらに、センサーの画素数が上がって画素ピッチが狭くなると、ベイヤーセンサーでは解像度向上のためにはセンサーを大きくする必要があります。Foveonセンサーはセンサーが小型であっても、ベイヤーセンサーより輝度情報が取れるので、解像力を高めることができます。これがFoveonセンサーと、ベイヤーセンサーとの技術的には最大の違いと言ってもいいものです。
Foveonでは3層のフォトダイオードが垂直に積載する形になっていますが、一般的なベイヤーカラーフィルターには、この色の層が水平で1つしかありません。人間の眼は緑の感受性が高いので、一般的なベイヤー配列のカラーフィルターはRGBを1:2:1で取り込んでいますが、Foveonの前世代はRGBを1:1:1の3層で取り込んでいます。その後のQuattroは1:1:4の3層でファイルサイズを抑えています。色は、BGRの順で取り込んでいます。Foveonセンサーの欠点は、高感度に強くないことです。高感度も含めて、どんな状況でも一定以上のの画質を求めるなら、通常のベイヤー配列のカラーフィルター機を買ったほうがいいと思います。
Quattroセンサーのことは、Quattroセンサーは何が変わったのかに書いています。
特に、体育館の暗い照明の中での室内スポーツ撮影などの被写体は、シグマのFoveonセンサー機が他の機種よりも相当に劣る場面です。2002年のSD9はRAW現像専用機で、JPEG撮影ができないカメラでした。2002年当時のRAW現像が今ほど普及していない時期に、シグマはRAW専用機を出していたのです。シグマはRAW撮影に強いこだわりがあって、それも、Foveonセンサーと関連しています。シグマのFoveonセンサー機には、SIGMA Photo ProでのRAW現像ができます。シグマのFoveonセンサーでは低感度でしっかりと撮れば、解像度と質感表現に優れた写真が撮れます。
Foveonセンサーは低感度でじっくり撮って、それをRWA現像することで、最高の一枚になります。今までのデジカメ史の中での画質を見ると、どれだけ高感度側のノイズが少ないかの競争になっている傾向があります。シグマのFoveonセンサーは、その流れに乗らない潔さがあります。その潔さは、良好な画質を考えるほどに自然なことでもあります。あるカメラでの最高画質は、そのカメラでの基準感度で撮影した写真です。
画質を追求すればするほどに、低感度側、基準感度での画質を重視するのは、考えて見れば当たり前のことです。ですが、この当たり前のことが軽視されて、それよりも高感度耐性が良好なカメラのほうがいいという傾向もあります。画質がいいと言われる時に、高感度耐性をどれほど重視するかの問題です。高感度撮影が重要なのは、スポーツ撮影で被写体を写し止めたいけれど、その時の光量が体育館などで不足気味の時です。多くの人が撮る晴天下での撮影や、曇りの日でも屋外の撮影なら、基準感度で撮ることはできます。Foveonセンサー機は、多くの人が撮る状況で、基準感度で撮って最高の一枚を撮ることができる機種です。
一般的なベイヤー配列の中でも、特に35mmフルサイズセンサーの一眼レフや一眼のレンズ交換式機は、高感度耐性が特に優れています。Foveonセンサー機の低感度側の優位性と、その35mmフルサイズの高感度の優位性の両方の機種を持っていれば、あらゆる被写体状況で最高の写真が撮れる組み合わせになります。数多くのカメラを使ってきても、いつまでも思い出に残る印象的な一枚がなかなか撮れないのでは、写真を撮る意味がかなり薄れていきます。会心の一枚を撮りたいのならシグマのFoveonセンサー機は非常に向いていますが、間違っても動体撮影で被写体を追い続けたり、高感度撮影が得意でもありません。
シグマのFoveonセンサー機のそういう特徴を認識して、低感度側で撮影するのなら、いつまでもその場の空気感まで表現できる写真が撮れます。コンデジから一眼レフや一眼に持ち替えて撮った時の感動が、シグマ以外の機種からシグマのFoveonセンサー機に変えたらまた感動が蘇ることもあるのは、Foveonセンサーが質感表現を重視しているからです。Foveonセンサーから受け取った質感そのままのディティールまで表現しようとしているのに対して、一般的なベイヤー配列のカラーフィルターのカメラは色の層が1層しかなくデジタル補完までしているので、どうしてもデジタル臭い平面画像になるのが避けられなくなっています。
シグマはFoveonセンサーでフィルムの3層に似たフィルムライクな写真をデジタル時代にも残そうとしているのですが、これをレンズメーカーのサードパーティーのシグマがしているのが興味深いです。これから、パソコンのモニターの画質が将来的にさらによくなるのは間違いないです。デジカメ専用機を使っている人たちは、スマホ時代と言われようが関係なく、パソコンでデジカメの写真を見ています。シグマ機を使うハイエンドユーザーならRAW展開するので、高性能パソコンを使っています。その場の空気感と質感を表現できる写真が、将来のさらに綺麗なモニターで見られることになります。これは、Foveonセンサーで撮った写真が今のパソコンのモニターで見るよりも、将来はさらに向上した写真になることです。
写真環境がよくなると、撮った写真が閲覧できる環境も向上します。すばらしいカメラで撮った写真は、将来に渡って、さらにすばらしい写真に変わっていきます。Foveonセンサーで撮る意味は、将来に渡って、良好な写真がさらにすばらしく変化するような現象になることです。デジタル写真は銀塩写真とは違って、保存で劣化はしないので、消失しない限りは永遠に将来のモニター環境の向上の恩恵を受けることができます。Foveonセンサーは、一般的なベイヤーセンサーよりも解像度が圧倒的に高いので、ほんの少しのピントやわずかなブレでも目立ちます。解像度が圧倒的に高いという優れた利点が、それゆえに、マイナスにもなり得ることもあるのです。さらには、Foveonセンサーは、ベイヤーセンサーより動画対応になっていません。静止画撮影を重視するほど、Foveonセンサーには価値があります。
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